※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

夜の江戸に、闇が密やかに蠢いていた。

その静寂を破るように、人吉藩江戸上屋敷の塀の外に、黒装束の影がいくつも現れる。公儀隠密——幕府の密命を帯び、影よりも暗く動く者たち。その数、およそ三十。目的はただひとつ。人吉藩主・相良頼房（宗介）の正室、かなめの身柄を奪い去ること。

しかし——その夜の藩邸には、ただの藩士など一人もいなかった。

「——入ってきたな。皆、予定通りに動け」

夜陰の中、屋敷の廊下で低く指示を飛ばす男の声。これは戦場だ。歓迎の準備は万端だった。

元・ヤン＆ハンター警備会社、通称「Y&H」社の社員たち——すなわち現・人吉藩の家臣団は、誰もが海外の実戦経験を持つ傭兵の猛者たち。長巻や槍ではなく、槍機関銃やグレネードで迎え撃つ戦国最先端の防衛陣。

「侵入者、北庭に十、南廊下に五！ 三手に分かれてきてます！」

「了解！ A班、北庭へ！ B班、迎撃ポイント二に！」

銃声と怒号が混じり合い、瞬く間に屋敷は戦場へと様変わりする。だが、それはただの始まりだった。

「出るよ、レイヴン——！」

上屋敷の裏庭。白銀の月光に照らされながら、白い装甲に青きラインが光る巨大なアーム・スレイブが姿を現す。機体名「11式改〈アズールレイヴン〉」。その操縦席に乗るのは、かなめの娘にして相良家の姫・夏美。

ブースターが火を噴き、レイヴンが跳躍。屋根を飛び越え、侵入者の一団に降り立った瞬間、地面が陥没するほどの衝撃が走る。

「——警告したわよね？ 無許可侵入は、即刻排除って！」

右腕から展開されたワイヤーガンが三名の隠密を捕縛し、左腕のブレードが寸前で止まる。

その後方、御殿の一室には明かりが灯っている。

「アクセス完了。幕府の傍受信回線にノイズ注入中。逆探知システムも機能停止させたよ。これでこの襲撃は……“記録されなかったこと”になる」

画面に向かってキーボードを叩き続ける若君——相良安斗。その目には幼さはなく、冷静な光が宿っていた。

そして、すべてを見下ろすように、瓦屋根の上では——

「いやぁ、面白いねぇ～。最近の大名屋敷の警備って、こういう感じなのか。アーム・スレイブまで出てくるなんてさ」

「なあリナ、あの白いの、動きがかっこよかったな。あれ、オレでも操縦できるかな？」

「ガウリィには無理。あたしが保証する」

リナ・インバースは頬杖をつきながら、瓦の上で団子を頬張っていた。目の下では、黒装束の隠密たちが次々と地面に叩き伏せられていく。

戦闘は、およそ二刻（四時間）も続かなかった。

すべての侵入者が制圧された頃には、屋敷の庭に縛られた黒装束たちが整然と並べられていた。

「ふふ……」

かなめが現れたのは、ちょうど朝日が東から顔を出す頃だった。彼女の姿は落ち着いた紫の小袖。だがその微笑には、どこか背筋が寒くなるような気迫が滲んでいた。

「さぁ～て、こいつらどうしようかしら……？」

その声に、最前列のひとりが悔しげに叫んだ。

「……くっ、一思いに殺せ！ この期に及んで生き恥をさらすつもりなどない！」

かなめは、あっけらかんとした笑顔を浮かべて首を振った。

「だーめ。殺しは子供の教育によくないの！ それに、あなたたちにはもっと素敵な役割があるのよ」

そう言って、指をパチンと鳴らす。

「……あっ、そうだ。いいことを思いついたわ♪」

その時の彼女の笑顔を見て、何人かの隠密は、確かに背筋に冷たいものを感じたという。

──そして、翌朝。

江戸の町に騒然とした声が響き渡る。

「お、おい、あれ見ろ……老中・酒井雅樂頭様の役宅の門前に……！」

「丁髷を切られて……簀巻き！？　簀巻きにされて並べられてるぞ！？ な、何事だこれは……！」

通行人たちが騒ぎ、役人たちが慌てて駆けつける。そこに並ぶは、昨夜の隠密たち三十名全員。頭を丸められ、藁に包まれて、まるで鮮魚のように門前に積み上げられていた。

彼らの腹の上には、整った文字でこう書かれた木札が置かれていた。

「貴殿の密命は無事、拝受いたしました。
以後は正式な手続きを通していただけますようお願い申し上げます。
なお、次回以降の無断侵入に関しましては、"保管期限なし"の冷凍保存処理を検討中です。」

家臣から報告を聞いた酒井雅樂頭は思った。

「あの女……やはり只者ではない……！」

その報告が江戸城に届くより早く、幕府中枢は震撼していた。

——この女を敵に回すな、と。

完